歯周病はギネスブックにも掲載されたことがあるほど、極めて感染者数の多い病気ですが、中にはかかりやすい方とそうでない方がいます。
また、何らかの原因で免疫力が低下している方は、歯周病にかかりやすくなるとされています。
ここからは、歯周病と免疫力の関係について、詳しく解説したいと思います。
免疫力について
そもそも免疫力とは、身体の外部から侵入してくるウイルスや細菌に対し、免疫細胞と呼ばれる特殊な組織が、自身の身体と組成が同じもの、そうでないものを区別し、その抗原となるウイルスや細菌などに対し、抗体という抵抗する物質を分泌させ、抗原を排除する力のことです。
風邪を引いたときなどに発熱するのは、このようなウイルスという抗原に対し、抗体が激しく戦っているからです。
また、このような生体反応を自然免疫といい、人の身体には遺伝的に受け継がれた生体本能の一つとして備わっています。
ちなみに、こちらの抗原は、一度でも身体に侵入すると、健康な身体では必ず対峙する抗体をつくるように、免疫細胞に記憶されます。
こちらを獲得免疫といい、人は自然免疫と獲得免疫という2つで自身の身体を守っています。
歯周病と免疫力の関係
先ほども触れた通り、免疫力は、細菌やウイルスが体内に入ってきたときに、それを異物と見なして排除し、身体を守る働きです。
免疫力が低下すると、風邪などの病気にかかりやすくなりますが、こちらは口内も例外ではありません。
免疫力が低下し、歯周病菌の影響がそれを上回ることで、どんどん歯周病菌が増殖し、発症のリスクは高まりますし、すでに症状がある方は悪化します。
また、風邪のときに熱が出るように、歯周病にかかると歯茎が腫れます。
こちらは、プラークからの攻撃に免疫力が立ち向かっている証拠です。
ただし、風邪とは違い歯周病の根源であるプラークは、除去しない限りその場にとどまり続けます。
そのため、プラークがある限り腫れも引きません。
歯周病が免疫力を低下させることも
免疫力が低下していると、歯周病の発症、悪化リスクは高まりますが、場合によってはこちらの逆の現象が起こることもあります。
歯周病が軽度のうちに定期検診を受けることができた方は、ブラッシングの仕方や歯科クリニックでのクリーニングにより、歯茎の炎症などの症状が大幅に改善します。
しかし、セルフケアだけに頼っている間は、歯周病であることに患者さん自身が気付かないため、歯茎の炎症が目に見えて改善することは稀です。
また、歯周病により、歯や歯茎が健康でなくなると、やわらかい食事を選びやすくなり、プラークが歯に付着しやすくなります。
その上、よく噛まずに飲み込むことで、内臓の負担も大きくなり、消化吸収が悪くなって、全身に必要な栄養素が行き渡らなくなってしまいます。
つまり、歯周病が免疫力を低下させ、さらなる体調不良や他の疾患につながるケースもあるということです。
免疫力を高める主な方法
歯周病にも悪影響を及ぼす免疫力は、疲労やストレス、食生活の乱れ、睡眠不足などによって生じます。
そのため、以下のような対策により、免疫力を高めることを意識するのが大切です。
・食事を工夫する
・適度な運動をする
・睡眠の質を高める
食事を工夫する
免疫力を高めるには、以下のような栄養素や食べ物を摂取すべきです。
・水溶性食物繊維(海藻類など)
・発酵食品(納豆、チーズなど)
・オリゴ糖
・オメガ3系脂肪酸
これらは、免疫細胞のおよそ7割が存在する腸のコンディショニングを整えることができます。
また、朝食を抜かない、発酵食品や夕食で多めに摂るなど、食べ方にも工夫が必要です。
適度な運動をする
免疫力を高めるには、適度な運動がとても効果的です。
体内にウイルスが侵入してきたときに戦う免疫細胞は、運動をすることによって活発に働くようになります。
おすすめの運動は、ウォーキングやジョギングなど軽めの有酸素運動であり、こちらの継続が免疫力を向上させます。
もし、なかなか外に出る時間がないというのであれば、下半身の筋トレや、上半身のストレッチ、ヨガなど、自宅で行えるもので、じんわりと軽い汗をかく程度の有酸素運動であればOKです。
睡眠の質を高める
質の良い睡眠を取ることで、細胞が十分に修復されたり、ストレスが解消されたりするため、免疫力はアップします。
また、質の良い睡眠に近づけるには、以下のようなことを実践してみましょう。
・1日8時間以上睡眠を取る
・朝起きたら太陽の光を浴びる
・食事は睡眠の3時間前までには済ませる
・お風呂のお湯はぬるめにする
・寝る前はリラックスして過ごす
・寝る前に酒、カフェイン、タバコを摂取しない など
まとめ
ここまで、歯周病と免疫力の関係について詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病は誰しもに発症リスクがある病気であり、免疫力が下がっているとさらにそのリスクは高まります。
もちろん、100%防止するのは難しいですが、少しでも歯周病菌が増殖しにくい口内環境をつくり、歯や歯茎、骨の健康を維持することが大切です。