虫歯が重度にまで進行し、歯の神経にまで虫歯菌が入り込んでしまった場合、その細菌を神経ごと取り除く根管治療が必要になります。
しかし根管治療は、重度の虫歯を患ったすべての患者さんに適用されるとは限りません。
今回は、根管治療を受けられない方の特徴を中心に解説します。
根管治療を受けられない人の特徴5選
以下に該当する方は、原則根管治療を受けることができません。
・ペースメーカーを使用している
・体内に取り外せない金属がある
・妊娠後期
・歯茎の中まで大きく虫歯が侵食している
・根の先の形態が壊れている
各項目について詳しく説明します。
ペースメーカーを使用している
ペースメーカーを使用している方は、原則根管治療を受けることができません。
こちらはペースメーカーと、根管治療に使用する器具の相性が関係しています。
ペースメーカーは、心拍数が少ない場合に人工的に心臓を動かすための装置であり、体内に埋め込まれています。
またペースメーカーは電磁波によって動作するため、根管治療で使用される機器によっては電磁波が発生することがあります。
例えば根管長測定器などについては、添付文書上、ペースメーカー患者に対する使用が禁止されています。
体内に取り外せない金属がある
体内に取り外せない金属がある方も、根管治療による影響が懸念されるため、基本的に治療は禁忌です。
例えば、狭心症や心筋梗塞の治療で行われる経皮的冠動脈インターベンションという治療では、ステントという金属製の器具が体内に装着されます。
こちらは体内の管状部分を内側から広げるための器具です。
またステントの多くは、身体に入れても害のない金属でできていますが、ペースメーカーと同じく根管治療で電子機器を使用する場合は注意が必要です。
場合によっては、体内の金属が厚くなり、周辺の組織を傷つけてしまうおそれがあります。
妊娠後期
妊娠している方であっても、安定期の場合は根管治療を受けることが可能です。
しかし妊娠後期に入っている方は、根管治療による負担が大きくなるため、基本的には治療の対象外になります。
また妊娠後期における歯科治療では、使用する薬剤や内服薬にも注意しなければいけません。
種類や用法・用量によっては、母子ともに悪影響が及ぶことがあります。
ちなみに妊娠初期の根管治療では、根管内に薬液を投与することがありますが、しっかりと蓋をするため全身への影響はほとんどありません。
歯茎の中まで大きく虫歯が侵食している
虫歯の進行具合によっては、根管治療が受けられなくなることがあります。
例えば、歯茎の中まで大きく虫歯が侵食している場合、根管治療は難しくなる可能性が高いです。
こちらは単純に、根管治療の難易度が上がることが理由です。
虫歯菌が神経を汚染すると、無菌状態が保てず神経を除去することになります。
しかし虫歯が歯茎の中まで大幅に侵食している場合、支台築造の型取りができないため、根管治療は不可になります。
ちなみに支台築造とは、歯の神経を失った歯の機能を回復させるために被せ物を装着する際、歯根と被せ物をつなぐポストやコアを設ける治療をいいます。
根の先の形態が壊れている
根管再治療の場合、根の先の形態が壊れていると大幅に難易度が上がるため、治療ができないケースがあります。
虫歯の大きな感染が根尖で長期間続いた場合、歯の根の先ができる前に神経を除去してしまった場合は、前の根管治療で歯根の先の形態を正常に保っておかなければいけません。
しかし根の先の形態が壊れている場合、歯内療法専門医が担当したとしても、成功率は50%程度にとどまります。
もちろん、すべての歯科クリニックに根管治療の専門医が在籍するわけではないため、実際はさらに成功率が下がることが予想されます。
根管治療ができない場合の治療について
根管治療ができない場合は別の外科手術などで対応することもありますが、歯根が残せないほど重症の場合は、残念ながら抜歯をするしかありません。
歯根が残せる状態であっても、歯の神経が死んでいる場合は同じく抜歯で対応します。
抜歯の方法については、まず歯と骨の間に器具を入れて引き離し、丁寧に歯を抜いていきます。
このとき、炎症によって悪くなった組織があれば除去することもあります。
また必要に応じ、歯茎を縫合することもあります。
もちろん重度の虫歯によって抜歯した場合には、歯を失った部分をカバーする必要があります。
歯を補う治療としては入れ歯やブリッジ、インプラントなどがあり、それぞれメリットやデメリットは異なるため、予算やライフスタイルに合わせて検討することが大切です。
まとめ
根管治療は虫歯を放置してしまった方、怖くて歯科クリニックに通院できなかった方などにとって、救いの手となる治療です。
しかし、根管治療が受けられない場合、症状の程度によっては抜歯のリスクも高まります。
そのため絶対に虫歯を放置しないだけでなく、日々のブラッシングなどを徹底し、虫歯を発症させないように努めることが大切です。