虫歯治療を受けた後は、口内に詰め物や被せ物を装着し、治療によって穴が開いた部分をカバーします。
また詰め物や被せ物には、金属素材が使用されることもありますが、こちらの素材はメタルタトゥーを引き起こすことがあります。
今回はメタルタトゥーの概要と、発症することのデメリットについて解説します。
メタルタトゥーの概要
メタルタトゥーは、虫歯治療で使用された金属が原因で、歯茎に黒ずみや変色が起こる現象です。
まるでタトゥーのように見えることが名前の由来です。
具体的には、金属が口内で溶け出し、金属イオンが歯茎に沈着することで黒く変色します。
またメタルタトゥーを引き起こす素材としては、主に銀歯が挙げられます。
銀歯は安価であり、古くから使用されているためエビデンスも豊富で、代表的な詰め物や被せ物の素材として使用されています。
しかし、銀歯という名前からもわかるように金属素材であるため、装着する以上はメタルタトゥーのリスクを排除することはできません。
ちなみに虫歯治療を受けた後、特に患者さんの要望がなければ、歯科医師の判断によって銀歯が適用されるケースがほとんどです。
特にそこまで重症度の高くない虫歯の治療については、詰め物として銀歯を装着させることを最終目標として行われます。
メタルタトゥーを発症するデメリット5選
虫歯治療で使用される金属素材により、メタルタトゥーを発症することのデメリットは主に以下の通りです。
・審美性の低下
・金属アレルギーの発症
・二次虫歯のリスク増大
・扁平苔癬の発症リスク増大
・治療費の高額化
各デメリットについて詳しく説明します。
審美性の低下
メタルタトゥーにおける最大のデメリットは、やはり口元の審美性が低下することです。
前述した通り、メタルタトゥーを発症すると歯茎が黒く変色してしまいます。
健康な歯茎は、本来ピンク色をしているため、黒は真逆といっても過言ではありません。
つまりメタルタトゥーを引き起こすことにより、非常に口元が不健康なイメージを与えてしまうということです。
また口元の審美性が低下すると、コミュニケーションにも悪影響を及ぼします。
具体的には、歯茎が見えるのをおそれて笑顔をつくれなかったり、積極的に会話しなくなったりすることがあります。
その結果、孤独感を感じたり、職場の同僚などに良くないイメージを持たれたりすることが考えられます。
金属アレルギーの発症
金属素材によるメタルタトゥーの発症は、金属アレルギーを引き起こす原因にもなります。
メタルタトゥーを発症しているということは、金属イオンが歯茎に漏れ出しているということです。
つまり、歯茎に対し金属がダイレクトに作用しているということです。
こちらは金属アレルギーのリスクを高め、歯茎の炎症や口内炎、舌のピリピリ感や唇、口角の腫れなどを引き起こします。
またさらに症状が悪化すると、アトピー性皮膚炎や汗疱状湿疹といった皮膚炎、蕁麻疹や味覚異常などにつながることもあります。
二次虫歯のリスク増大
二次虫歯のリスクが高まることも、メタルタトゥーを発症するデメリットです。
メタルタトゥーを発症しているということは、すでに金属素材の詰め物や被せ物を装着し、ある程度時間が経っているということになります。
金属イオンは、補綴物が劣化することで漏れ出すからです。
また銀歯などが劣化している場合、必然的に歯と歯の間に生じる隙間も大きくなります。
この隙間に虫歯菌が侵入すると、詰め物や被せ物の下で起こる二次虫歯のリスクが高まります。
ちなみに、二次虫歯は補綴物の下で起こるため、発症していてもなかなか気付けません。
場合によっては、重度にまで進行したタイミングで初めて見つかることも考えられます。
扁平苔癬の発症リスク増大
メタルタトゥーを発症することにより、扁平苔癬のリスクも高くなります。
扁平苔癬は、皮膚や口内粘膜に現れる角化異常を伴う慢性炎症性病変です。
特徴的な症状としては、紫色の平坦な隆起した小丘疹、白色のレース状の病変などが挙げられます。
歯茎に直接金属が作用すると、メタルタトゥーだけでなくこのような病変が見られる可能性も高まります。
ちなみに扁平苔癬は、がんの前兆症状である前がん病変の一つとしても知られています。
治療費の高額化
メタルタトゥーを発症すると、単純に治療費は高額化する可能性が高いです。
メタルタトゥーを治療するには、まず原因となっている口内の詰め物や被せ物を取り外さなければいけません。
また場合によっては歯茎の再建などが必要になるため、必然的に治療費は高くなるケースが多いです。
まとめ
虫歯治療後に適用する補綴物に対し、特にこだわりがない方は、銀歯などの金属素材を選ぶことも多いです。
しかし、金属素材にはメタルタトゥーや金属アレルギーのリスクがあります。
これらは口元の見た目を悪くしたり、痛みや炎症を引き起こしたりするだけでなく、全身への影響につながることも考えられます。
そのため、詰め物や被せ物の選択は慎重に行うべきです。