入れ歯を使用している方は、常に口内を清潔に保たなければいけません。
そうしなければ、口内環境が悪化し、入れ歯の使い勝手にも支障が出ることがあります。
またここでいう口内環境の悪化には、歯周病を発症することも含まれています。
今回は、歯周病が入れ歯に与える悪影響について解説します。
歯周病が入れ歯に与える悪影響
歯周病を発症することにより、入れ歯を使用している方は以下のような影響を受けます。
・顎の骨の吸収促進
・違和感や異物感
・咀嚼力の低下
・発音への影響
・残存歯の喪失リスク増加
・口臭の発生
・味覚の変化
・心理的ストレスの増大
各項目について詳しく説明します。
顎の骨の吸収促進
入れ歯をしている状態で歯周病を発症すると、歯を支える顎の骨が吸収され、減少します。
そのため、入れ歯を支える土台が不安定になり、入れ歯がずれやすくなります。
特に総入れ歯の場合、歯列全体の安定感を失うことにつながるため、日常生活における不便さはとても大きくなります。
違和感や異物感
入れ歯を作製する際は、そのときの口内環境にあわせてサイズなどが決められます。
そのため、作製後に歯周病を発症すると、どうしても違和感や異物感は強くなります。
例えば歯茎が炎症を起こし、明らかに当初よりも腫れている状態になると、当然入れ歯の装着感はきつく感じますし、痛みも出るようになります。
咀嚼力の低下
咀嚼力が低下することも、歯周病が入れ歯に与える悪影響の一つです。
歯周病の影響によって入れ歯が不安定になると、食べ物を噛む力が弱まり、食事が困難になることがあります。
入れ歯はただでさえ、天然歯と比べて咬合力が強くないため、咀嚼力が低下することは非常に不便です。
発音への影響
入れ歯を装着している状態で歯周病を発症すると、発音への影響が出る可能性もあります。
前述の通り、歯周病の影響を受けた入れ歯は安定感を失い、使用中にずれたり外れたりしやすくなります。
会話の途中に入れ歯がずれたり外れたりすると、当然発音はしづらくなりますし、相手に何度も聞き返される原因にもなります。
残存歯の喪失リスク増加
入れ歯を装着した状態で歯周病が悪化すると、入れ歯の支えとなる歯を含む残存歯が抜け落ちるリスクが高まります。
そのため、他の歯に依存する部分入れ歯などを使用する方は、新しく入れ歯をつくり直さなければいけない可能性があります。
もちろん、一度抜け落ちた天然歯は元には戻らないため、その部分も入れ歯などで補わなければいけません。
口臭の発生
入れ歯はしっかり清掃しなければ、不衛生な状態になり、それを装着していると口臭が強くなります。
また入れ歯をしっかり清掃していても、歯周病を発症している場合、膿などの影響から口臭は強くなりやすいです。
もちろん、歯周病と入れ歯の清掃不良が重なった場合は、強烈な悪臭を放つ可能性が高いです。
味覚の変化
入れ歯を使用している方が歯周病を発症すると、味覚にも良くない変化を及ぼします。
歯周病による炎症や入れ歯の不適合は、味を感じる能力に影響を与えることがあります。
例えば食べ物を美味しく感じなくなったり、口内がネバネバして美味しさが半減したりすることが考えられます。
心理的ストレスの増大
入れ歯の状態で歯周病を発症した場合、前述の通りさまざまな悪影響が及びます。
またこれらの悪影響は、食事や会話の楽しみを奪い、精神的なストレスを増大させることにつながります。
さらに、ストレスが蓄積することにより、別の疾患を患ってしまう可能性もあります。
歯周病を防ぐには
入れ歯をしている方が歯周病の発症を防ぐには、まず入れ歯の清掃を丁寧に行うことを意識しましょう。
入れ歯は長い間、口内に装着しておくものです。
そのため、入れ歯の衛生状態が悪いと、当然口内の衛生状態も悪くなり、歯周病を発症しやすくなります。
もちろん入れ歯だけでなく、天然歯や歯茎のブラッシングも大切です。
具体的にはバス法を意識し、歯ブラシと毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当てます。
磨くときは軽い力で、1～2本ずつ小刻みに動かし、歯周ポケット内の汚れをかき出します。
このとき力を入れすぎると、歯茎を傷つける原因になるため、注意が必要です。
さらに、歯ブラシ以外のアイテムを使用するのもポイントです。
歯ブラシだけでは、歯と歯の間や歯周ポケットの汚れまで完全に落とすことができません。
デンタルフロス、歯間ブラシなどのアイテムを毎日併用しましょう。
ちなみに、セルフケアでは取り切れない汚れや歯石については、歯科クリニックで専用の器具を使って除去する必要があります。
まとめ
入れ歯は歯を失った方が装着するものです。
また歯を失った方の中には、これまでセルフケアをおざなりにしていた方もいるかもしれませんが、入れ歯を装着する以上はそういうわけにはいきません。
歯周病を発症すると、本来患者さんにピッタリの入れ歯が合わなくなり、使い勝手が悪くなります。
もちろん、場合によってはつくり直すことも検討しなければいけません。
