歯周病と全身疾患との関係は非常に深いです。
歯周病の悪化によって脳や心臓、肺などあらゆる組織や臓器に関する疾患のリスクが高まることが、長年の研究によって明らかにされています。
今回は、てんかんという疾患の概要と、歯周病との関係について詳しく解説します。
てんかんの概要
てんかんは、脳内の神経細胞(ニューロン)が一時的に過剰な放電を起こすことで、発作が繰り返し発生する慢性的な脳の病気です。
発作の症状は多岐にわたり、全身のけいれん、体の一部の震え、意識を失ってぼんやりする、感覚の異常などが挙げられます。
てんかんの原因は大きく2つに分けられます。
1つは脳梗塞、脳出血・外傷・腫瘍など脳に明らかな傷や障害がある“症候性てんかん”、と、もう1つは異常が見つからず体質が関与していると考えられる特発性てんかんです。
100人から200人に1人の割合で発症し、乳幼児から高齢者まであらゆる年齢層で見られる一般的な病気です。
治療の基本は抗てんかん薬による薬物療法で、約7割から8割の患者は適切な服用によって発作をコントロールし、支障なく日常生活を送ることが可能です。
歯周病とてんかんの関係性4選
歯周病とてんかんには、主に以下のような関係性があります。
・抗てんかん薬による副作用
・歯周病の炎症による発作の誘発
・発作時の転倒や食いしばりによる外傷的リスク
・口腔ケアの困難さと生活の質への影響
各項目について詳しく説明します。
抗てんかん薬による副作用
てんかんの治療に用いられる特定の薬には、副作用として歯肉増殖を引き起こすリスクがあります。
これは歯茎が異常に盛り上がり、歯を覆い隠すほど肥大化してしまう状態です。
この肥大した歯茎は、構造上どうしてもプラークが溜まりやすくなります。
通常のブラッシングでは毛先が届きにくいため、プラークの中に潜む歯周病菌が爆発的に増殖し、重度の歯周病へと進行する悪循環に陥りやすくなります。
また増殖した歯茎自体が炎症を起こして出血や痛み、強い口臭の原因にもなります。
薬の服用を止めることは難しいため、歯科医院での定期的なクリーニングや、専門家のアドバイスに基づいた徹底的なプラークコントロールが求められます。
歯周病の炎症による発作の誘発
近年の研究では、口の中の炎症が脳に影響を与える可能性が示唆されています。
歯周病は、歯茎が細菌に感染して慢性的な炎症を起こしている状態です。
このとき、体内で作られる炎症性サイトカインという物質が血液を通じて全身を巡り、脳の神経系に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
脳内に炎症物質が届くと、神経の過剰な興奮を招き、てんかん発作を引き起こす閾値を下げてしまうリスクがあります。
つまり、口の中を不潔なままにして炎症を放置すると、発作の頻度が高まったり、症状が重くなったりする危険性があるということです。
発作時の転倒や食いしばりによる外傷的リスク
てんかん発作が起きた際、激しい食いしばりや転倒による衝撃は、歯周病で弱った歯に対して致命的なダメージを与えます。
健康な歯茎であれば耐えられる衝撃でも、歯周病によって歯を支える骨が溶けている場合、歯が折れたり、根元から抜け落ちたりするリスクが非常に高くなります。
また発作中に舌を噛んだり、口の中を傷つけたりした際、口内に歯周病菌が蔓延していると、傷口から細菌が侵入し、激しい化膿や二次感染を引き起こすことも珍しくありません。
さらに歯がグラグラしている状態で発作が起きると、欠けた歯や抜けた歯が気道に入り込み、窒息や誤嚥性肺炎を招く命に関わる事故に繋がるおそれもあります。
万が一の発作に備えるためにも、歯周病を治療して歯の土台を強固に保っておくことが極めて重要です。
口腔ケアの困難さと生活の質への影響
てんかんを持つ方の中には、発作への不安や薬の影響、あるいは付随する障害などにより、自身で十分な口腔ケアを行うのが難しいケースがあります。
ケアが疎かになると短期間で歯周病が進行し、食事の楽しみが奪われたり、見た目の変化から自信を失ったりするなど、生活の質が大きく低下します。
特に噛むという行為は脳を刺激し、精神的な安定にも寄与するため、歯周病で歯を失うことはてんかん患者さんにとって大きな損失となります。
また歯科治療自体がストレスとなって発作を誘発するのではないかという不安から受診を控えてしまい、その間に症状が悪化するという負のループも存在します。
現在は、てんかんの持病に配慮した歯科診療も普及しています。
自身だけで抱え込まず、家族や周囲のサポートを得ながら、無理のない範囲でプロのケアを取り入れることが、歯周病とてんかんの両方とうまく付き合う鍵となります。
まとめ
本記事で触れたように、歯周病とてんかんにはさまざまな関係があります。
てんかんの方は、歯周病の悪化リスクが比較的高く、予防に必要不可欠な口腔ケアにおいて不利になることも考えられます。
そのため、なおさら強い歯周病予防の意識を持たなければいけません。
もちろん、ここでいう歯周病予防には、自宅で行うセルフケアだけでなく歯科クリニックでの定期検診も含まれています。
