自身の天然歯は、できる限り多くの本数を残すべきとされています。
日本では、80歳までに20本の天然歯を残す8020運動が広く認知され、実際達成する方も増えています。
では逆に、自身の歯が1本もなくなるケースには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
今回はこちらの点について解説します。
歯が1本もなくなることのデメリット4選
自身の歯が1本もなくなることには、以下のようなデメリットがあります。
・咀嚼機能の著しい低下と全身の健康被害
・顎の骨の吸収と治療の難化
・顔貌の変化と老け顔の定着
・発音障害による孤独と精神面への影響
各デメリットについて詳しく説明します。
咀嚼機能の著しい低下と全身の健康被害
歯をすべて失うことの最大のデメリットは、食べ物を噛み砕く咀嚼という生命維持の基本動作が極めて困難になることです。
歯が揃っている状態に比べ、歯がなくなると噛む力は1/10以下にまで激減すると言われています。
その結果ナッツ類や生野菜、ステーキなどの弾力や繊維のある食材を避けるようになり、どうしてもパンや麺類、やわらかく煮込んだ炭水化物中心の食事に偏りがちになります。
このような食生活の変化は、深刻な栄養バランスの崩れを招きます。
ビタミンやミネラル、食物繊維が不足する一方で、糖質や脂質の過剰摂取が起こりやすく、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の発症リスクを飛躍的に高めます。
また十分に細かくされないまま飲み込まれた食べ物は、胃腸に過度な負担を強いることになり、消化不良や栄養吸収効率の低下を引き起こします。
さらに咀嚼は脳への血流を促進し、神経を刺激する役割も持っています。
噛む回数が減ることは、脳への刺激の減少に直結し、近年では認知症の発症リスクを高める大きな要因の一つとして医学的にも注目されています。
顎の骨の吸収と治療の難化
歯を失うと、それまで歯を支えていた歯槽骨という顎の骨がその役割を終えたと身体に判断され、急速に溶けて吸収されていきます。
骨は適度な圧力や刺激を受けることでその密度や形状を維持する性質がありますが、歯が一本もない状態では咀嚼の刺激が骨に伝わらないため、骨は痩せ細っていきます。
この骨吸収は、将来的に口の機能を回復させようとする際の大きな障壁になります。
例えば入れ歯を作製しようとしても、土台となる骨が平らになってしまっていると、吸着力が得られず会話や食事のたびに外れたり、粘膜に当たって激しい痛みを生じたりします。
またインプラント治療を希望しても、埋め込むための骨の厚みや高さが足りず、自分の腰や別の部位から骨を移植するような外科手術を併用しなければならなくなります。
一度失われた顎の骨を元に戻すのは、現代の高度な歯科医療をもってしても非常に困難な作業です。
時間が経過すればするほど骨は減り続け、最終的にはどの治療法を選んでも満足に噛めないという最悪の事態を招く可能性があります。
顔貌の変化と老け顔の定着
歯は単に食べ物を噛む道具であるだけでなく、口元の皮膚や筋肉を内側から支える柱の役割を担っています。
すべての歯を失うと、この支柱が完全に消滅するため、顔の下半分に劇的な変化が起こります。
まず唇が内側に巻き込まれるように薄くなり、口角が下がります。
頬の肉も支えを失って垂れ下がり、鼻の下から顎にかけての距離が短くなることで、顔全体がクシャッと押し潰されたような独特の老人様顔貌へと変化します。
特に口周りには深いほうれい線やマリオネットラインが刻まれ、実年齢よりも10歳~20歳以上も老けて見られることが一般的です。
これは美容上の問題だけにとどまらず、顎の骨が痩せることで顔の輪郭が変わり、皮膚が余ってシワが増える現象は、セルフイメージを大きく低下させます。
鏡を見るたびに自分の変貌にショックを受け、自信を失い、笑顔を見せることが苦痛になってしまいます。
発音障害による孤独と精神面への影響
私たちは言葉を発する際、歯をガイドにして舌を動かし、空気の漏れを調節して音を作っています。
特にサ行やタ行、ナ行やラ行などは、歯が一本もない状態では正確な発音がほぼ不可能になります。
言葉が不明瞭になり、いわゆるフガフガした話し方になってしまうため、電話での対応や初対面の人との会話で、自分の意思が正しく伝わらないという場面が頻発します。
この話しにくさと見た目へのコンプレックスが重なると、多くの人は他人との接触を極端に避けるようになります。
人前で笑うことや食事をすること、会話することは人間関係を構築する上で最も重要なコミュニケーションですが、歯がないことでそのすべてが苦行に変わります。
友人とランチに行く、趣味の集まりに参加するといった社会的な繋がりが断たれ、自宅に引きこもりがちになる社会的孤立を招くリスクが非常に高いです。
こうした孤立状態は、孤独感や抑うつ状態を引き起こすだけでなく、会話による脳への刺激がなくなることで、認知機能の低下に拍車をかけます。
まとめ
若いうちからしっかりセルフケアや定期検診の受診を行っていなければ、高齢になったとき歯が1本もなくなる可能性は十分にあります。
もちろん、歯がなくなった場合でも入れ歯やブリッジ、インプラントなどで補填できれば咀嚼や会話の機能は維持されます。
しかし、どのような補綴物よりも天然歯の方が機能性は高いため、やはり多くの天然歯を残すことを意識する必要があります。
