口内で発生する問題と言えば、代表的なのはやはり虫歯や歯周病などの疾患です。
また口内炎なども一般的ですが、中でも非常に怖いものに口腔がんが挙げられます。
名前は聞いたことがあっても、実際どのようなものか知らない方は多いのではないでしょうか?
今回は、口腔がんに関するさまざまなことを解説します。
口腔がんとは?
口腔がんは、口内のさまざまな箇所に発生するがんの一種です。
具体的には舌や歯茎、口底(舌の下)や頬粘膜、硬口蓋(口の天井)などに発生します。
罹患者数の傾向は?
日本では口腔がんの罹患者数が増加傾向にあり、30年前と比較して4倍以上に増えているという報告もあります。
ただし、割合は全がんの約2%程度であり、希少がんに分類されます。
どの部位にもっとも多く発生する?
口腔がんの発生は舌がもっとも多く、口腔がん全体の約50~55%を占めます。
男女比や年齢層に特徴はある?
口腔がんの発症率は男性が女性の約2倍多く、60~70代に多い傾向がありますが、若年者の罹患も増えています。
口腔がんの生存率は?
早期(ステージI・II)であれば5年生存率は90%前後と高いですが、進行すると低下します。
口腔がんの初期症状は?
口腔がんの初期症状としては、口腔内の痛みやしこり、腫れやただれ、なかなか治らない口内炎などが挙げられます。
また進行するとがん組織の壊死などにより、強い口臭を伴うことがあります。
口内炎との見分け方は?
通常の口内炎は1~2週間で治ります。
2週間以上経っても治らない、あるいは硬いしこりがある場合は口腔がんの可能性があるため、受診が必要です。
痛みがない場合でも口腔がんの可能性がある?
口腔がんの初期は痛みを伴わないことが多く、痛みが出た時には進行しているケースが少なくありません。
考え方としては虫歯と似ています。
舌のどのあたりにできやすい?
口腔がんは、舌の中でも特に歯と絶えず接触する舌の側面に多く発生します。
歯のぐらつきも口腔がんのサイン?
歯周病ではないのに歯がぐらつく、抜歯後の傷が治らないといった症状も、口腔がんのサインの一つです。
口腔がんの主な原因は?
口腔がんは、喫煙と飲酒が最大の要因です。
非喫煙者と比較して、罹患リスクが約2.4倍~7倍高まるとされています。
また過度の飲酒もリスクを高め、特に喫煙と組み合わさると相乗的に危険性が増します。
歯の被せ物などが原因になることは?
合わない入れ歯や壊れた被せ物による継続的な機械的な刺激が、発がんの要因になることがあります。
口内が不潔だと口腔がんになりやすい?
多量のプラークや歯石の放置など、不衛生な状態も口腔がんのリスク因子の一つです。
何かを受診すれば良い?
口腔がんの場合、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科・頭頸部外科が専門窓口となります。
受診する診療科によって異なりますが、視診・触診のほか、細胞診・組織診、CT・MRI、超音波検査、PET検査などが組み合わされます。
ステージはどのように分類される?
口腔がんは、がんの大きさと転移の有無によりI~IVに分類されます。
I・IIは早期、III・IVは進行がんです。
前がん病変とは?
前がん病変とは、白板症や紅板症など、将来的にがん化する可能性がある病変を指します。
口腔がんの治療法は?
口腔がんは手術療法が中心ですが、放射線治療、抗がん剤治療を適切に組み合わせて行います。
手術で舌を切り取ったら話せなくなる?
口腔がんの手術で舌を切り取っても、早期であれば会話に支障はありません。
また大きく切除した場合も、再建手術やリハビリで話せるようになります。
再建手術とは?
再建手術は、お腹や腕の皮膚・組織を移植して、舌などの機能を補う手術です。
いわば舌の切り取った部分に、別の部位の皮膚や組織を持ってくるということです。
治療後に食事はできる?
口腔がんの治療直後は難しい場合がありますが、摂食嚥下訓練(飲み込みの練習)により、多くの方が再び食べられるようになります。
口腔がんが転移しやすい場所は?
口腔がんは、首のリンパ節(頸部リンパ節)への転移が多い傾向にあります。
治療後の経過観察はどれくらい続ける?
口腔がんの治療を受けた後の経過観察は、一般的に5年間程度、徐々に受診間隔を空けながら継続します。
再発を防ぐためにできることは?
口腔がんの再発を防ぐには、禁煙、節酒を徹底し、口腔内を清潔に保つことが重要です。
家族ができるケアは?
口腔がんの治療を受けた方の家族は、その方の口の中の乾燥を防ぎ、清潔に保つ介助や、誤嚥(飲み込みの失敗)を防ぐ姿勢のサポートなどが重要です。
まとめ
ここまでご覧になっていただいた方は、口腔がんという疾患について、なんとなく理解していただけたことでしょう。
口腔がんは決して発症しやすいものではありませんし、他のがんに比べると死亡率も決して高くありません。
しかし、放置していても治ることはないですし、口内炎と見分けがつかないケースもあります。
そのため、口腔内の問題が生じたときは、普段から歯科クリニックに相談する癖をつけておきましょう。
