虫歯治療では、さまざまな道具を必要に応じて使い分けます。
これらがなければ、安全かつ正確でスピーディーな虫歯治療を実現することはできません。
また虫歯治療において、もっとも重要な道具と言っても過言ではないものに、エアタービンが挙げられます。
今回は、エアタービンの詳細について解説します。
エアタービンの概要と特徴
エアタービンは、虫歯治療において虫歯に侵された硬い歯の組織、エナメル質や象牙質を効率良く削り取るために開発された、もっとも一般的な手持ち式の切削器具です。
患者さんが歯科クリニックで耳にすることが多いキーンという高い動作音の正体は、このエアタービンが発するものです。
歯科医師が持ちやすいように細長いペン状になっていて、先端のヘッド部分にバーと呼ばれるダイヤモンド粒子などがコーティングされた小さな刃物を装着して使用します。
非常に高い回転数を持つため、硬い歯をまるでバターをなぞるように滑らかに削ることが可能です。
現代の虫歯治療、特に初期段階の歯の形を整えたり、大きな虫歯を一気に除去したりする行程においては、治療時間を短縮し負担を軽減するための必須の道具となっています。
安全に使用するため、削る際には摩擦熱を防ぐための注水と、手元を照らすLEDなどのライトが同時に作動する仕組みが一般的です。
高速回転を可能とする仕組みと構造
エアタービンがこれほどまでに高速で回転できる理由は、その内部構造にあります。
器具の内部には小さな風車のようなローターと精密なベアリングが組み込まれています。
歯科用ユニット(診療台)から供給される高圧の圧縮空気を、このローターに吹き付けることで、物理的に強力な回転を生み出しています。
その回転数は毎分30万〜50万回転に達し、これは飛行機のジェットエンジンやレーシングカーのエンジンを遥かに凌ぐ驚異的なスピードです。
この超高速回転により、刃先が歯に触れた瞬間に強い引っかかりを起こすことなく、スムーズに切削を行うことができます。
また、ヘッド部分には水と空気を同時に噴射するノズルが備わっていて、回転時に発生する強力な摩擦熱から歯髄を守るため、常に冷却水を霧状に吹き付けながら機能します。
近年では、空気が逆流して細菌が器具内に入り込むのを防ぐクリーンヘッドシステムなども搭載され、衛生面も高度に進化しています。
エアタービンのメリット・デメリット
エアタービンの最大のメリットは、硬いエナメル質を短時間で、かつガタガタという不快感をほとんど与えずに切削できる点です。
回転が速いため、力を入れずに軽く触れるだけで歯が削れ、治療の精密性とスピードが格段に向上します。
これにより、患者さんが口を開けている時間を短縮できます。
一方で、明確なデメリットも存在します。
もっとも代表的なのが、先ほども触れたあの独特なキーンという高い不快音です。
この音は多くの患者さんに「痛い」「怖い」という恐怖心を植え付ける原因となっています。
また、トルクという回転する力自体はそれほど強くないため、硬い金属の詰め物を削る際や、器具を歯に強く押し付けすぎると回転が止まってしまうことがあります。
さらに超高速で水を噴霧しながら削るため、口の中で水が溜まりやすく、唾液や血液が混ざった微細な飛沫が周囲に飛散しやすいという衛生管理上の課題もあります。
そのため、歯科クリニック側での徹底した滅菌・吸引などの対策が必要です。
他の道具との違い
虫歯治療にはエアタービン以外にも用途に応じた器具があり、適切に使い分けられています。
代表的な比較対象が、5倍速コントラアングルハンドピースです。
これは空気ではなく電気モーターで動き、ギアで回転数を5倍(毎分約20万回転)に高めた器具です。
エアタービンに比べて回転数は劣るものの、削る力が非常に強く、キーンという高音が出ません。
軸がブレにくいため、より精密に歯の形を整える際や、金属を外す際に多用されます。
また、低速で回転する普通のコントラは、やわらかい虫歯を削る際に用いられます。
その他の最新技術として歯科用レーザーや虫歯を溶かす薬であるカリソルブなどもあります。
これらは当然キーンという音がなく、健康な歯を削りすぎないという利点がありますが、治療できる虫歯の進行度に限度があり、削るスピードもエアタービンには及びません。
そのため、現在の虫歯治療では、まずエアタービンで効率良く大部分を削り、細部を5倍速コントラや低速コントラで仕上げるというコンビネーション治療が主流となっています。
まとめ
虫歯治療を行うにあたって、エアタービンは必ず使用するアイテムの一つです。
またこちらを扱う歯科医師の技術も、当然虫歯治療の安全性や正確性、早さには直接関係してきます。
そのため、虫歯治療を受ける際は経験や実績が豊富な歯科クリニックを選びましょう。
虫歯治療はどの歯科クリニックでも当然のように行われていますが、基本的な治療だからこそ、歯科医師の経験や技術が大きく反映されやすいとも言えます。
