歯周病は、主に口内におけるトラブルが発生する疾患です。
歯茎が腫れたり、少しの刺激で出血するようになったりすることは、よく知られています。
では、歯周病を発症することにより、周りの方に迷惑をかけるケースはあるのでしょうか?
今回はこちらの内容について解説します。
口臭による周囲への精神的ストレスと不快感
歯周病が他人に与える、もっとも直接的かつ深刻な迷惑が口臭です。
歯周病が進行すると、歯周ポケットの中で歯周病菌が増殖します。
この細菌が、剥がれ落ちた粘膜や血液などのタンパク質を分解する際に、メチルメルカプタンや硫化水素といった揮発性硫黄化合物を大量に発生させます。
これらは腐ったタマネギや腐った卵に例えられる、非常に強烈な悪臭です。
口臭のタチが悪い点は、本人は鼻が慣れてしまい気づきにくい一方で、周囲の方は極めて敏感に察知するというギャップにあります。
オフィスでのデスクワーク、会議、対面での接客、あるいは満員電車やエレベーターなどの密閉空間において、強い口臭は周囲の方に深刻な精神的ストレスを与えます。
周りの方は「指摘すると傷つけるかもしれない」「関係性が悪化するかもしれない」と気を遣い、あえて何も言わずに我慢したり、距離を置いたりせざるを得なくなります。
結果として、周囲に不必要な気疲れをさせ、職場のコミュニケーションや良好な人間関係を阻害するという重大な迷惑をかけることになります。
食事の場における視覚的・衛生的な不快感
歯周病は、一緒に食事をする人たちの食欲を減退させ、その場の雰囲気を台無しにする視覚的・衛生的な迷惑を引き起こします。
歯周病が進行すると、歯茎が慢性的な炎症を起こして赤く腫れ上がり、少しの刺激でも容易に出血するようになります。
例えば会食中に食べ物を噛んだ際、スプーンや箸、あるいは食べ残したものに血が付着しているのを同席者が見てしまうと、強い不快感や嫌悪感を抱かせます。
さらに、進行した歯周病では歯茎から膿が出ることもあり、これが唾液に混ざることで口元が不衛生に見えたり、会話中に不快な印象を与えたりします。
また歯周病によって歯を支える骨が溶けると、歯と歯の間にブラックトライアングルという大きな隙間ができます。
ここに食べカスが詰まりやすくなり、食事中や食後に人前で頻繁に爪楊枝を使ったり、手で口元を気にしたりする仕草も、同席者に上品ではない印象を与えます。
“一緒に楽しく食事をする”という共有の時間を、自身の口腔環境の悪さによって不快なものに変えてしまうリスクがあります。
スキンシップや至近距離での感染リスク
歯周病は単なる個人の老化現象ではなく、細菌による感染症です。
そのため、家族やパートナーなど、身近な大切な人に対して病気をうつしてしまうという健康上の迷惑をかけることになります。
歯周病菌は、唾液を介して人から人へと感染します。
具体的にはパートナーとのキス、家族間での回し飲みやスプーン・箸の共有、親から子どもへの口移しでの食事摂取などが感染経路になります。
特に、生まれたばかりの赤ちゃんや幼児の口腔内にはもともと歯周病菌はいませんが、周囲の大人からの唾液感染によって菌が定着してしまうケースが非常に多いです。
どれだけ周囲の方が毎日一生懸命に歯磨きをしていても、身近にいる方が大量の歯周病菌を保有し、日常生活の中で振りまいていれば、周囲の人の歯周病リスクは跳ね上がります。
大切な人の歯や歯茎の健康を脅かし、将来的に歯を失う原因を自分が作ってしまうという意味で、非常に責任が重く、実害の大きい迷惑行為となってしまいます。
医療費の増大と労働生産性の低下による社会・経済的負担
歯周病の放置は、個人個人の問題にとどまらず、社会全体や組織への経済的な迷惑へとつながります。
近年の医学研究では、歯周病菌が血管を通じて全身に巡ることで、糖尿病の悪化、心筋梗塞や脳梗塞、認知症、誤嚥性肺炎などを引き起こす引き金になることが分かっています。
歯周病を放置して全身の病気を発症・悪化させると、莫大な医療費がかかります。
日本の公的医療保険制度は国民全員の保険料で支えられているため、予防できたはずの病気で医療資源を圧迫することは、巡り巡って社会全体の負担を増やすことになります。
また会社組織においては、歯周病による激しい歯痛や、それに起因する全身疾患の治療のために、突然の欠勤や長期の休職を余儀なくされることがあります。
これにより、職場の同僚に業務のシワ寄せが行き、チーム全体の労働生産性が低下します。
健康管理を怠った結果として、社会のシステムや勤務先の企業、同僚に対して時間的・金銭的な負担を強いることになります。
まとめ
本記事で触れた通り、歯周病はさまざまな形で周りの方に悪影響を及ぼすことが考えられます。
そのため、自分さえ良ければ良いと思わず、発症している自覚がある方は早急に歯科クリニックで治療を受けましょう。
また発症していない方も、普段から歯科クリニックの定期検診に訪れる習慣をつけ、発症のリスクをなるべく軽減すべきです。
