虫歯を予防するにあたっては、患者さんが正しい知識を身に付ける必要があります。
またどれだけ歯科クリニックで指導を受けても、実践するのは患者さん自身であるため、虫歯予防の意識を強く持つことが大切です。
今回は、虫歯予防における極めてマニアックな疑問にお答えしたいと思います。
夜型の人は唾液のポテンシャルが低い?
遺伝や生活習慣によって夜型の生活を送っている方は、睡眠時間や磨く回数が朝型の方と同じであっても、生物学的に虫歯リスクが高くなる傾向があります。
これは、人間の自律神経と唾液の分泌量に組み込まれた体内時計(サーカディアンリズム)が関係しています。
人間の身体は、本来夜間は唾液の分泌量を極限まで減らして睡眠に備えるようにプログラミングされています。
夜型の方が深夜2時や3時まで起きているとき、身体は睡眠モードに入りかけているため、起きているにもかかわらず唾液の分泌量は昼間の何分の一にも激減しています。
また唾液が出ない乾燥した状態で夜食を食べたり、作業の合間に糖分の入った飲み物を口にしたりすると、口の中は中性に戻ることなく、朝までずっと酸性のまま放置されます。
夜型生活を送る場合は、深夜は唾液のバリア機能がほぼゼロになるという生物学的な弱点を自覚し、深夜の飲食を断つか、飲食後は徹底的にフッ素ケアを行う必要があります。
グミが他のお菓子より危険な理由とは?
子どもから大人まで大人気のグミですが、歯科の世界ではキャラメルやチョコレートを遥かに凌駕する最悪の虫歯誘発スナックとしてマークされています。
その理由は、グミ特有の粘着性とゼラチンによる咀嚼時の噛み込みにあります。
グミを噛むと、強力な圧力によって奥歯の複雑で深い溝の奥底に、砂糖とゼラチンが混ざり合った高濃度の塊がギュウギュウに押し込まれます。
この押し込まれたグミは、唾液の洗浄作用や通常の歯ブラシの毛先ではまったく届かないほど深い場所に強固にこびりつき、何時間も溶けずに残り続けます。
さらにグミに果汁などの酸味が含まれている場合、歯の表面を溶かしながら砂糖をダイレクトに供給するため、虫歯菌にとってこれ以上ない最高の繁殖基地が完成します。
グミを食べた後の予防策としては、ただ歯を磨くだけでは不十分です。
まず温かいお湯で口をしっかりゆすいでゼラチン質をふやかして溶かし、その後に奥歯の溝を意識してタフトブラシ等で掻き出す特殊なケアが必要です。
ガムを噛みすぎると虫歯のリスクが上がるって本当?
キシリトールガムなどのボトルガムをオフィスや車内に常備し、虫歯予防のために1日に何個も噛み続けている方がいます。
こちらは唾液が出て良いこと尽くめに見えますが、実は過剰に噛みすぎると、ある落とし穴によって逆に虫歯リスクを高めてしまうケースがあります。
1日中ガムを噛み続けて唾液腺を酷使すると、一時的に唾液腺の疲弊が起こり、ガムを噛んでいない時間帯の基礎的な唾液分泌量がガクッと落ちてしまうことがあります。
さらに深刻なのが、噛み合わせの摩耗です。
ガムを四六時中噛んでいると、歯の表面のエナメル質が物理的にすり減り、歯の頭の溝がなくなったり、マイクロクラックという微細なひび割れが生じたりします。
目に見えない微細なひび割れの中に虫歯菌が侵入すると、歯ブラシの毛先が入らない場所で虫歯が進行するため、外見は綺麗なのに内部がスカスカになる隠れ虫歯を誘発します。
そのため、ガムによる予防は1日3〜4回、1回10分程度に留めるのがもっとも安全です。
赤ワインを飲むと虫歯になりにくくなる?
赤ワインを飲むと、歯や舌が紫色や黒っぽく着色してしまうため、口の健康に悪そうに見えますが、こと虫歯予防の観点に限れば、赤ワインは非常に優秀な効果を持っています。
赤ワインには、ブドウの皮や種に由来するレスベラトロールやプロアントシアニジンといった強力なポリフェノールが超高濃度で含まれています。
これらワイン特有のポリフェノールは、虫歯菌の活動をブロックし、菌が歯の表面に付着してプラークを形成するのを防ぐ強力な抗着生効果があります。
海外の研究では、アルコールを除去した赤ワインでも同様の抗菌効果が見られたため、アルコールそのものではなくポリフェノールの手柄であることが実証されています。
ただし赤ワイン自体は酸性の飲み物であるため、ダラダラと長時間飲み続けると歯の表面を溶かすリスクがあります。
赤ワインのポリフェノール恩恵だけを賢く受け取るためには、おつまみにチーズなどを一緒に食べ、飲んだ後は水で口をゆすぐという組み合わせがベストです。
まとめ
虫歯予防は、単に自宅で丁寧なブラッシングをするだけで完結するものではありません。
虫歯のメカニズムや脅威について詳しく知り、細かい対策を取っていかなければ、簡単に虫歯が形成されてしまいます。
また口内環境を良くすることは、虫歯だけでなく歯周病の予防、ひいては全身疾患の予防にもなるため、正しい知識を持って意欲的に取り組むことが求められます。
